外道ちゃんの備忘録

読んだ本の内容についての備忘録

「正しい政策」がないならどうすべきか 安全性に関する内容の備忘録

 

第四章安全性

 

安全性に関する規制を設ける妥当な理由

①消費者保護のため

⇒一般的に商品の売り手は書いてよりも多くの知識を持っている。(情報の非対称性)

売る商品の質について売りては買い手にやや恣意的な情報を与えることも可能。

⇒例:食品安全基準が設けられる前の19世紀イギリス 一口飲む度のどが渇くような塩を混ぜたビールやチョークの粉によって膨らませたパン

情報不足は搾取、そして結果的に危害につながる

消費者の知識不足を補うための保護の方法

①きわめて重い危害や市のリスクをもたらす商品の販売を禁止する

②消費者の知識を向上させる⇒食品表示制度

もし人々がすべての関連情報を得られたとしても合理的な判断をできるという期待は持てない(パターナリズム一形態)

安全性は個人の自由な選択にゆだねられるという考えは、選択肢が一つの時には通用しない

⇒独占市場が存在するところでは安全レベルもまた独占されている。

政府が最低限の安全基準を設けることは全く正当⇒そうした基準はどのように決められるべきなのか

鉄道安全基準委員会:2001年重大な事故が多発し鉄道会社の評価は最悪の不振に陥った

⇒多くの人は十年前に行われた鉄道民営化による結果だと考えた

⇒ある調査論文の1つは異なったとらえ方

鉄道交通は統計的に見ると重大な衝突事故を含めた場合でも極めて安全

最近のいくつかのあたらしい鉄道安全対策のために使われた費用は最低限の基準をはるかに上回っていた

⇒これ以上の安全システムの導入はわずかな改善のために莫大なお金を費やすことになる

 

このディレンマは二つの道徳的観点の対立としてみることができる

1つ目の観点「帰結主義的」な道徳的視点

われわれは鉄道の安全性の向上にさらに費用をかけるのではなく、実行可能な手段によってより多くの命を救える方法を探すべきだ

⇒今ある手段を用いて最大の全を実現するように方向づける考え方

 

功利主義:伝統的で宗教的な道徳に対する、人道的で啓蒙的なオルタナティブ

伝統的で宗教的な道徳による正しい行為⇒人間が常に行ってきたことか、神により命ぜられたこと

ベンサムとミルは伝統的な道徳学説がもたらす服従と抑圧の道を放棄

⇒もしある方策がすべてを考慮したうえで人間にとって膳出ないのならそれは道徳的に要請されないという考え方を示す<人間の解放を目指す学説>

功利主義の問題点:道徳を人間の幸福に基礎づけているのではなく、幸福の合計を最大化するという観点から正しい行動を定義している点

⇒多数の人々の小さな利益のために、少数の人の大きな犠牲が要求される

1年に一人かを救うために新システムを導入⇒払う税金が増える(一人当たりでは小さな損失に過ぎないが何百万人の人のお金を減らすなら全治の紅葉の損失はかなりのものになる)

より大きな善のために少数の人々を犠牲にしなければいけない場合がある

 

功利主義的な推論を何らかの領域に適用するためのステップ
①取りうる行動についての潜在的なコストとベネフィットのリストを作る
②それがどれだけの幸福ないし効用、あるいはその逆の不幸ないし不利益をもたらすかを評価する
⇒どのようにして人間の幸福に意味のある数字をつけることができるのか(個人間の紅葉の比較)

 

2つ目の観点

「絶対主義的」な道徳的視点(義務論あるいは義務に基づく推論)

絶対主義的な理論類型の背後にある基本的な考え方:道徳というものは少なくとも通常の状況においては、帰結に関する考慮を上回る何らかの根本法則を設ける

 

命にどれだけの値をつけられるか

一人の命を救う値段「死亡回避価値」(イギリス140万ポンド、アメリカ600万ドル)

 

小さなリスクを減らすために我々が実際にお金を払っていることに気づくことの2つの意義

①安全性に支払いをすること、安全性に値段をつけることが実際には日常生活の一部であることに気づかせてくれる点

②我々の支払いの額の合計を何らかの形で用いることによって安全規制における統計的生命価値を示すことができるかもしれないという点

 

生命の統計的価値をどう計算するか

30年前:失われた経済的貢献の可能性をもとにその価値を算出

⇒人間は「人的資本」、すなわち得られる可能性のあった収入の源泉とみなされた

経済への貢献可能性が大きければ大きいほど、その人の価値は大きい

現在:「人的資本」アプローチに代わり「支払意思額」モデルを採用

⇒人々がするであろう、あるいは実際にする購入の決定に着目して生命の価値を算出

人々が現に行う支払からは顕示選好という方法が導き出され、人々が行うであろう支払からは表明選好という方法が導き出される

顕示選好:人々はどのような安全機器のためにお金を使うのか、危険な仕事をする見返りとしてどのくらい追加賃金を要求するのかという実際の市場での行動に着目

利点:実際の市場行動に着目する

欠点::しばしばこの方法が人々のもつ根底的な態度をその行動から導き出そうという試みに近くなってしまう

⇒「心的な全体論」:人々の行動を説明する際に欲求と信念がともに役割を果たすことを前提にすれば、もし行動を取り巻く信念が順応できるなら、あらゆる行動はあらゆる欲求と合致していることになるという論

①ある危険な製品を安全であると信じて買ってしまう人もいるかもしれない。その人のリスクに対する態度についてはわからない

②ある行動が単一の目的のためにとられることはあまりない。安全なほうの車を買ったからといってリスクを削減するために追加料金を支払ったということを示すわけではない(外観や色を気に入った可能性)

 

表明選好:純粋に仮説的な「支払意思」モデルを用いるもので、通常は仮想評価と呼ばれる

利点:①実験者は、被験者が購入を選択する際に安全性という要素のみに集中できるような形で質問を設定することができる

②ある任意の被験者に理論上いくつもの質問を行うことができるため、極めて多くのデータを得ることができる

制約:①フレーミングの問題

リスクを避けるためにある特定の金額を支払うといった人が、事故が起きた場合補償としてさらに多くの金額を要求するのが一般的

多くの意思決定理論の予測によれば、支払意思額と補償受取意思額は一致するはずであるが実際には違いがある

②仮想評価をする際に実際にお金が手元にないのであれば、われわれは示された金額をどう真剣に受け止めることができるのか確信が持てないという点

③人間は可能性が極めて低い事柄について合理的に意思決定をするのが極めて苦手だという点

 

事故が起きたとき、すべての当事者は「誰に、あるいは何に責任があるのか」、さらに「誰が悪いのか」ということに強い関心を抱く

⇒「非難されるべきものの追跡記録」を明らかにするためにエネルギーが費やされる

責任が会社の内部(直接的に関心を持つべきもの)にあるか外部(あまり関心を)払わなくてもよいものにあるか

ある事故の原因がより会社の道徳的過失であればあるほど会社はより絶対主義的な態度で、同種の事件を予防すべきという原理

 

 引用参考文献
ジョナサン・ウルフ 大澤津・原田健二郎(訳)(2016).「正しい政策」がないなたどうすべきか 勁草書房