外道ちゃんの備忘録

読んだ本の内容についての備忘録

「正しい政策」がないならどうすべきか 犯罪と刑罰に関する内容の備忘録

第五章犯罪と刑罰

犯罪の何がそんなに悪いのか

犯罪の持つ強制技術的な側面⇒頑丈な鍵の必要性があったから精密工学が発達した(マルクス)

福祉に関する幸福理論によれば、犯罪が悪いのはそれが人々を不幸にさせるから

⇒なぜ犯罪が人々をそれほど不幸にするのか?

犯罪への恐怖とは、犯罪によって生ずる平均的に予測される客観的な影響についての恐怖と同一ではない

 

「犯罪のどれをとっても、あらゆる人の胸の中心において、人あるいは財産に対する無限の損害の恐怖、そして生命そのものの破壊への恐怖を呼び起こし、生かし続けておくのに十分である。この無限の損害への恐怖。これに比べれば、各々の事件で実際に生ずる被害の害悪を合計したものも、ほとんどとるに足らない」(ベンサム)

ベンサムの2つの重要な指摘

①犯罪には極めて多様な性質のものがあり、様々な種類の犯罪に対するわれわれの心理的な反応もまた様々なものになりうるということ

②こうした犯罪がもたらす恐怖の合計は、犯罪がもたらす損害の合計よりも多いだろう

ということ

イギリス内務省の犯罪部網における職務綱領「犯罪を減らす、そして犯罪への恐怖を減らす」

⇒犯罪への恐怖が、犯罪そのものよりも深い影響を人々の生活に与えうるという認識に基づいている

また 犯罪を減らす一つの方法は  、人々がより強く警戒することだという考えにも基づいている

不安が問題になる2つの理由

①不安はそれ自体として不快である

②不安は極めて望ましくない帰結をさらに招来しうる

 

 

われわれはいったいなぜそれほど犯罪を恐れるのか

「無限の損害」

⇒自分が制御できない、あるいは影響を及ぼせないほどまでに混乱して悪化する状況を回避しようとする意識

 

ある人があなたを犯罪のターゲットとして目をつけることにより、極めて不愉快な形であなたを扱う。⇒尊厳の欠如あるいは侮辱を示す(ルソー)

他人からの侮辱を恐れるがゆえに犯罪恐れる?⇒核心ではない

⇒未遂に犯罪の被害者になることと実際の犯罪の被害者になることの違い

羽座に被害者にされた場合、人は自分が自らの運命の支配者であるという感覚を失う

 

われわれはなぜ人を投獄するのか

刑罰の正当性に関わる3つ主要な刑罰理論

①抑止:ほかの人が同じ行為をしないように防止するため

②更生:犯罪者を模範的市民に矯正するため

③応報:懲罰としての純粋な刑罰を加えるため

 

第四の理論「無害化理論」:犯罪者に対処するのに耐えかねて、そうしなくてもすむように投獄するという考え方。

第五の理論:刑罰とは本質的には特殊なコミュニケーション行為の一種であるという考え方

 

抑止理論は人間の行動に関する経済的モデルを前提にしている。

ある行為をするのに一定のコストをともなう蓋然性がある場合、そのコストが高ければ高いほど、またその蓋然性が高ければ高いほど、その行動はより魅力的でなくなるという考え

抑止理論の根底には、罪を犯すかもしれない人が

行おうとする犯罪行為について若干の費用便益分析を行い、もし潜在的なコストないしリスクが大きければ、それをやめるだろうという想定がある

 

応報理論は、犯罪者は罰に値するがゆえに罰せられなければならないという考えに依拠

「同害復讐法」と関連

リベラルな人々は応報を極めて不愉快なものとして考える

⇒社会が応報を求めるからという理由だけである人を投獄するのは野蛮

もし刑罰が将来に何の目的も果たさないなら何の意味もない

 

刑罰は当事者間の立場をリバランスさせる

⇒被害者の立場を引き上げ、加害者の立場を引き下げる

 

なぜ人々が罪を犯すのかを理解しない限り、量刑政策の変更が犯罪率の変化に結び付くかどうかはわからない

行動の帰結を計算するという経済的モデルが、個々人の動機として本当に当てはまるのか

 

人々が法に対して持ち得る2つの異なった態度(ハート)

①「内的」態度:自分の国の法律に賛同し、それをある意味で「自分のもの」だと考えている人たちによってとられる態度。法律を自分の行動に対する絶対な拘束とみなす。

法律を守るべきかどうかを比較衡量したりせず、法を守る利益の方が違反する利益にまさると初めから判断している

「純粋な内的態度」:どんな場合でも法律を犯さない

「純粋でない内的態度」:費用便益計算の結果がどうなるかがすでにわかっているため、費用便益分析をする意味を行わない。

⇒まともな生活を送っている人にとって前科というコストは圧倒的なものであり、どんな利益もそのコストを上回らないことは明確

 

②「外的」態度:法律を自分のしようとする行動に対してついてくるコスト、あるいは少なくともリスク(危険因子)とみなす態度

法律を破ることにともなうリスクが高ければ高いほどそれをより守るようになる

 

さらに別の類型

 

「無秩序(支離滅裂)な」態度:衝動や怒り、傲慢に基づいて行動し、その結果をほとんど考慮しない、劇場による犯罪。

法を破ることに快感や満足を覚える「反権威主義者」。

刑罰の厳格化は彼らのスリルを増させるだけ

 

量刑政策を変更することによって犯罪が抑止されうるのは外的態度を持つ人々についてである。

犯罪者が他の集団に比べて著しく多い集団は10代及び20代前半の男性

⇒人は年を取るにつれ犯罪から抜け出す

⇒多くの人は年を取るにつれ、純粋な形ではないにしても内的態度をとるようになる

失うものが多くできたために、行おうとする犯罪についての費用便益計算をし、犯罪がコストに見合わないことを知る

 

目を引く3つの調査結果

①犯罪を起こす可能性のある人が、犯罪発見率が上がっていると思えば、罪は減る

②刑期を長くすることはほとんど何の抑止効果をもたない

③ある人の社会的関係が広ければ広いほど、その人は犯罪を起こす可能性が低い

⇒ある人の人生にもたらす前科のインパクトが犯罪の削減にとって最も大事

犯罪を減らす最良の方法「すべての人に社会における役目を与える」こと

⇒自らが社会の一員だと感じられるようにすること。前科それ自体が極めて不利になるような状況へと人々の境遇を変えていくこと

 

 

刑罰にたいする様々なアプローチの区別

①「将来志向」:将来において達成できることの観点から刑罰の目的をみる

⇒抑止、矯正、無害化理論はこの性格を持っている

②「過去志向」:刑罰により生じうる効果というよりは、過去に起きたことに着目する

犯罪をより功罪の観点からみるもの

⇒応報理論はこの性格をもっている

人間の幸福に関して哲学的に議論しようとすれば、それほど多くの悲惨をもたらす犯罪とはいったい何なのか

何が人間の生活を良い、あるいは悪いものにするのか

①善き生とは幸福ないし満足感に充たされた生活である

②善き生とは所得や財産の面で資源に恵まれ、高い生活水準を可能にする生活である

⇒資源に恵まれたとしても耐えがたいような生活もありうるし、資源に乏しくても幸せな生活はありうる

 

引用参考文献
ジョナサン・ウルフ 大澤津・原田健二郎(訳)(2016).「正しい政策」がないなたどうすべきか 勁草書房